スタートアップ支援の第一人者・大櫃直人氏がミダスキャピタル社外取締役に就任

2025年4月1日付で、プライベートエクイティファンドの株式会社ミダスキャピタルは、大櫃直人(おおひつ なおと)氏が社外取締役に就任したと発表しました。大櫃氏は1988年に旧第一勧銀系のみずほ銀行に入行して以来、長年にわたり同行で企業金融に携わり、2013年からはスタートアップ・成長企業支援に注力してきた人物です。みずほ銀行で執行役員(2018年就任)、常務執行役員(2022年就任)などの要職を歴任し、直近ではみずほフィナンシャルグループおよびみずほ銀行のエグゼクティブアドバイザーを務めていました。金融界での豊富な経験と実績を持つ大櫃氏の社外取締役就任は、ミダスキャピタルにとって大きな話題となっています。

大櫃直人氏とは~「伝説のバンカー」と称される理由

大櫃氏は日本のスタートアップ支援の世界では「伝説のバンカー」と称される存在です。みずほ銀行在籍時代、新興企業に対する融資の常識を覆し、実績のない創業間もない企業でも可能性があればリスクを取って資金提供したことで知られています。この革新的な姿勢によって、メルカリやマネーフォワードなど現在日本経済を牽引する数多くのスタートアップの成長を陰ながら支えた立役者とも評されています。実際、過去10年間で約4,000社のスタートアップ企業を自ら訪問し、うち500社以上に融資を実行した実績があります。これらの融資先には前述のメルカリやマネーフォワードの他、タイミーなども含まれており、日本の新興企業エコシステムにおいて極めて大きな貢献を果たしてきました。

こうした卓越した業績により、大櫃氏は社内外で高い評価を受け、NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも特集されました。同番組では「融資の常識を変え、多くのスタートアップを育てた銀行員」として紹介され、その仕事哲学や信念に迫る内容が放映されています。銀行の重役でありながら毎日数多くの起業家と直接向き合い、資金の話だけでなく経営者の人柄やビジョンまで深く理解しようとする姿勢は、大櫃氏の真骨頂といえるでしょう。本人はこれを「気配値」と呼び、財務数値に表れない情報を掴んだ上で企業の将来性を見極めることを重視しているといいます。こうした独自のスタイルでスタートアップ支援に取り組む姿は、多くの起業家や同業の銀行員にも刺激を与えました。

さらに大櫃氏は現場での支援活動だけでなく、政府のスタートアップ政策立案にも関与してきました。2022年には岸田政権の「新しい資本主義実現会議」傘下の「スタートアップ育成分科会」の構成員に金融機関出身者で唯一就任したほか、経済産業省の「スタートアップ・ファイナンス研究会」に委員として参画し、国レベルでスタートアップ支援策の強化に貢献しています。まさに産業界と金融界を股に掛け、日本の新産業育成を牽引してきたキーパーソンが大櫃直人氏なのです。

ミダスキャピタルとは – 独自モデルで急成長中のPEファンド

ミダスキャピタルは2017年設立の新興プライベートエクイティ(PE)ファンドで、独自のビジョンとモデルで注目を集めています。最大の特徴は、外部からの資金を一切集めずに関係者から拠出された内部資本のみで運用を行っている点です。通常のPEファンドが外部投資家(LP)の出資を集め一定期間内でのリターンを求めるのに対し、ミダスキャピタルはファンド期限に縛られない超長期目線での投資が可能となっています。このモデルにより、同社は短期的な出口戦略に追われることなく、「企業群」の長期価値最大化という観点で投資先企業の成長支援にコミットできる体制を築いています。

設立からわずか8年でミダスキャピタルは飛躍的な成長を遂げました。同社が過半数出資するグループ企業群(「ミダス企業群」)の時価総額合計は、7年前の50億円から2025年現在4,500億円に達しています。この驚異的な成長は、同社独自の「企業群」戦略と長期投資アプローチの成果を如実に示しています。投資先はIT・スタートアップだけでなく、伝統産業のDX推進企業から消費財ビジネスまで多岐にわたり、「世界に冠たる企業群を創る」というビジョンのもと事業を展開中です。同社は投資先企業のバリューアップ(価値向上)支援専門のチームも新設するなど、投資後の経営支援にも力を入れています。

ミダスキャピタルの代表取締役社長を務める吉村英毅氏は、同社を率いてわずかな期間で日本有数の独立系PEファンドへと成長させました。その背景には、従来のファンド運営モデルにとらわれない柔軟な発想と、投資先経営陣との強固なパートナーシップ志向があります。今回、大櫃氏の合流により、ミダスキャピタルは金融業界における知見や人的ネットワークをさらに強化し、企業価値向上策の高度化や新規投資機会の発掘において一層の推進力を得ることになるでしょう。

大櫃氏就任のねらいと今後の展望

今回の大櫃氏の社外取締役就任には、ミダスキャピタル側の明確な狙いが伺えます。発表によれば、同社は今後、大櫃氏による経営全般のサポートを受けて企業群の発展に努めていくとしています。スタートアップから大企業まで幅広い企業への融資・支援経験を持つ大櫃氏が経営陣に加わることで、ミダスキャピタルの投資先支援体制は一段と強化されると期待されます。特にリスク管理やグローバル視点での市場分析、新規投資機会の発掘といった分野で大櫃氏の知見が活かされる見込みです。

ミダスキャピタルはさらなる成長目標として、短期的に1兆円、中期的に10兆円、長期的には100兆円という野心的な企業群時価総額を目指しています。このスケールでの成長には、資金調達やリスク管理の高度化が不可欠であり、大櫃氏の金融業界での豊富な経験が重要な役割を果たすと考えられます。

大櫃氏自身も「これまで培ってきた金融業界での経験と知識を活かし、革新的な投資戦略と卓越したリーダーシップで確固たる地位を築きつつある当社のさらなる成長に貢献したい」と述べ、全力でサポートする意欲を表明しています。

まとめ:金融レジェンドの参画で加速する成長

大櫃直人氏の社外取締役就任は、ミダスキャピタルにとって大きな転機であると同時に、日本のスタートアップ・投資業界にとっても象徴的な出来事と言えるでしょう。長年メガバンクで新産業の育成に奔走してきた金融レジェンドが、独立系のPEファンドという新たなフィールドでどのような化学反応を起こすのか注目が集まります。ミダスキャピタルは大櫃氏という強力な知見と人脈を得て、引き続き「世界に冠たる企業群を創る」というビジョン実現に向け邁進していくことでしょう。今後、大櫃氏のサポートの下で同社が生み出す新たな成功ストーリーに期待が高まります。


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