PEファンド出身の上田顕氏が新社長就任、サーチファンドによる中小企業承継の成功事例を創出
投資概要
株式会社サーチファンド・ジャパン(代表取締役:伊藤公健)は、サーチャー(経営者候補)である上田顕氏とともに、留学斡旋業「ディーサイド留学情報センター」を運営する株式会社アットワールド(本社:東京都新宿区)への事業承継投資を実行したと発表した。
この投資は、2023年3月に設立された2号ファンドによる4件目の投資であり、前身の1号ファンドからの累計投資件数は8件となる。上田氏は投資と同時に代表取締役社長に就任し、創業者の浜端昌也前社長は顧問として新経営体制を支える。
サーチファンドの投資手法とその意義
サーチファンドは、経営者としてのポテンシャルを持つ人材(サーチャー)が、投資ファンドの支援を受けて企業を買収し、自ら経営者として企業価値向上を図る投資手法である。
サーチファンドの特徴
- 経営者候補の育成と企業買収を組み合わせた投資手法
- M&A/ファイナンスの専門知識サポート
- 情報・ネットワークの提供と共有インフラの構築
- 信用補完とM&A資金の提供
- M&A後の継続的な経営サポート
この手法は、日本の中小企業が直面する深刻な事業承継問題の解決策として注目されており、後継者不足に悩む企業と経営意欲の高い人材をマッチングする新しい仕組みとして機能している。
上田顕氏の経営者としての資質
今回のサーチャーである上田顕氏は、PEファンド投資先での経営経験を豊富に持つ稀有な人材である。
経歴とキャリア
- 東北大学理学部卒業
- 三井住友銀行、アクセンチュア戦略グループ、楽天野球団を経験
- アドバンテッジパートナーズ傘下の日本ポップコーンでCOO、CEO歴任
- 日本企業成長投資傘下のセラヴィリゾート泉郷でCTO(最高変革責任者)
- プロ野球データ分析会社DELTAの戦略アドバイザー
この経歴は、金融、コンサルティング、スポーツビジネス、そして実際の企業経営まで幅広い領域での実践経験を示している。特に、PEファンド投資先での経営者経験は、投資家の視点と経営者の視点を両方理解する貴重な背景となる。
アットワールドの事業価値と市場性
事業概要
- 1999年創業の留学エージェント
- 世界32カ国1,000校以上の教育機関と提携
- 高校正規留学に強みを持つ専門性
- 語学留学、ワーキングホリデー、大学留学、海外インターンシップの提供
市場での評価 「ST Secondary School Awards 2025」アジアエージェント部門でのノミネートは、同社の専門性と実績が国際的に認められていることを示している。
事業の成長性
- 「高校留学ワールド」による高校生向けサービス
- 「ジブン流学」ブランドによる大学生向け主体的留学
- 社会人向けキャリアアップ留学プログラム
- 多様化する留学ニーズへの対応力
留学業界は、グローバル化の進展と国際的な人材需要の高まりを背景に、長期的な成長が期待される分野である。特に、コロナ禍を経て回復基調にある海外留学需要は、今後の拡大が見込まれる。
日本の事業承継問題への解決策
日本では、中小企業経営者の高齢化と後継者不足が深刻な社会問題となっている。
統計的背景
- 中小企業経営者の平均年齢は約60歳
- 後継者不在率は65歳以上の経営者で約50%
- 事業承継問題による廃業は年間約7万件
サーチファンドの仕組みは、この問題に対する革新的な解決策として機能する。優秀な経営者候補と承継を希望する企業をマッチングし、投資ファンドが資金とノウハウを提供することで、事業の継続と発展を同時に実現する。
投資スキームの革新性
サーチファンド・ジャパンの投資スキームは、従来のPE投資とは異なる特徴を持つ。
従来のPE投資との違い
- 既存経営陣の交代ではなく、新経営者の育成に重点
- 短期的なリターン追求ではなく、中長期的な企業価値向上
- 財務的改善だけでなく、経営者の成長も投資成果の一部
投資家にとっての意義
- 新しい投資手法による差別化
- 社会課題解決への貢献
- 中長期的な安定リターンの追求
合弁パートナーの戦略的価値
サーチファンド・ジャパンは、日本M&Aセンターホールディングス、日本政策投資銀行、キャリアインキュベーション等との合弁会社として設立されている。
各パートナーの役割
- 日本M&Aセンターホールディングス:M&A実務ノウハウと案件ソーシング
- 日本政策投資銀行:政策金融機関としての信用力と資金調達力
- キャリアインキュベーション:人材育成と経営者候補の発掘
この多様なパートナーシップにより、資金、ノウハウ、ネットワークを統合した包括的な支援体制が構築されている。
Tokyo Search Fundとの連携
今回の投資では、2023年11月に設立されたTokyo Search Fundも共同投資している。これは、サーチファンド生態系の拡大と、投資機会の多様化を示すものである。
複数のサーチファンドによる共同投資は、リスク分散と専門性の相互補完を可能にし、より安定した投資成果の実現に寄与する。
投資業界への示唆
この案件は、日本の投資業界に対して複数の重要な示唆を提供している。
1. 新しい投資手法の確立 サーチファンドは、従来のPE/VC投資とは異なる第三の投資手法として確立されつつある。
2. 社会課題解決と投資リターンの両立 事業承継問題の解決という社会的意義と、投資リターンの追求を両立させるモデルを提示している。
3. 経営者育成の重要性 単なる資本提供ではなく、次世代経営者の育成に投資する価値を実証している。
ESG投資の観点
サーチファンドによる事業承継投資は、ESG投資の観点からも高く評価できる。
社会面(S)
- 雇用の維持・創出
- 地域経済の活性化
- 技術・ノウハウの継承
ガバナンス面(G)
- 企業統治の改善
- 経営の透明性向上
- 株主価値の最大化
今後の展望
サーチファンド・ジャパンの累計投資件数8件という実績は、この投資手法の日本での定着を示している。
短期的展開
- 2号ファンドでの追加投資実行
- サーチャー候補の育成・発掘
- 投資先企業の価値向上支援
中長期的展開
- 3号ファンドの組成検討
- 他の金融機関・事業会社との連携拡大
- サーチファンド生態系の更なる発展
まとめ
サーチファンド・ジャパンによるアットワールドへの投資は、日本の事業承継問題に対する革新的な解決策として、投資業界に新たな可能性を提示している。
PEファンド出身の上田顕氏という経験豊富な経営者候補と、国際的に評価される留学エージェントという優良企業の組み合わせは、サーチファンド投資の成功モデルとなることが期待される。
特に、単なる資本提供を超えて、経営者育成と企業価値向上を同時に実現するこのモデルは、日本の中小企業投資における新しいスタンダードとして注目される。
今後のアットワールドの成長と、サーチファンド・ジャパンの投資活動の拡大は、日本の投資業界における事業承継投資の発展に大きく寄与することが期待される。
企業情報
株式会社アットワールド
- 本社:東京都新宿区新宿3-2-1 京王新宿321ビル7F
- 設立:1999年
- 事業内容:留学斡旋業
- 新社長:上田顕氏(前職:PEファンド投資先CEO等)
株式会社サーチファンド・ジャパン
- 本社:東京都千代田区平河町1-6-4
- 設立:2020年10月
- 事業内容:サーチファンド形式でのM&A投資ファンドの運営
- 代表取締役:伊藤公健
株式会社日本M&Aセンターホールディングス
- 本社:東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 鉃鋼ビルディング24階
- 設立:1991年4月
- 代表取締役社長:三宅卓
- 上場:東証プライム(2127)
本記事は2025年5月12日のプレスリリースを基に作成
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