医療機器分野に特化した専門VCの登場
株式会社RMDパートナーズ東京(代表取締役:弟子丸佳久)は、医療機器ベンチャー企業への投資に特化した「Medical Development Support 2号投資事業有限責任組合(MDS2号ファンド)」を組成した。ファンド規模は20億円を予定しており、医療機器分野に特化したVCファンドとして注目を集めている。
医療機器分野は薬事規制や臨床試験など特有のハードルが存在し、専門的な知見とネットワークが不可欠だ。同社は2024年10月に設立された比較的新しいVCだが、医療機器分野に特化することで差別化を図る戦略を取っている。
大手医療機器企業のLP参画が示す戦略的価値
本ファンドの最大の特徴は、大手医療機器企業がLPとして参画している点だ。これは単なる資金提供にとどまらず、投資先企業に対する事業化支援、販路開拓、規制対応などの面で強力なバックアップが期待できることを意味する。
医療機器スタートアップにとって、大手企業との連携は製品化・事業化の成功確率を大きく左右する。開発段階での技術アドバイス、薬事承認プロセスの支援、販売チャネルの提供など、大手医療機器企業のリソースを活用できることは、投資先企業にとって資金以上の価値がある。
シード・アーリー特化で社会実装を加速
投資対象は、医療機器、診断機器、デジタルヘルス、治療デバイスを開発するシード・アーリーステージのベンチャー企業。特に「医療ニーズの変化や現場の課題に応える革新的な医療機器・ヘルスケア分野」を重視している。
医療機器分野は開発から上市まで長期間を要するため、シード・アーリーステージからの支援が重要となる。10年という長期の存続期間を設定していることも、医療機器開発の時間軸を考慮した設計と言える。
デジタルヘルスへの注目が示す市場機会
投資対象にデジタルヘルスが明記されている点も注目に値する。プログラム医療機器(SaMD)、遠隔医療、AI診断支援システムなど、デジタル技術を活用した医療機器は急速に市場が拡大している。
特に日本では、2014年の薬機法改正でプログラム医療機器が法的に位置づけられて以降、デジタルヘルス分野への投資が活発化している。保険適用されるデジタル治療アプリも登場し、事業化の道筋が明確になってきた。
医療機器エコシステムの構築に向けて
本郷エリアに拠点を構える同社の立地も戦略的だ。東京大学医学部附属病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院など、日本を代表する医療機関が集積する文京区本郷は、医療イノベーションの中心地として知られる。
また、同エリアには多くの医療系スタートアップやVCが集まっており、エコシステムの形成が進んでいる。MDS2号ファンドの設立は、このエコシステムをさらに強化する動きと言える。
投資家にとっての機会と課題
20億円規模のファンドは、年間10〜15社程度への投資が可能な規模感だ。医療機器分野に特化することで、専門性の高いディールソーシングと投資判断が可能となる一方、投資機会の多様性は限定される。
しかし、高齢化社会の進展、医療費削減ニーズの高まり、新興国市場の成長など、医療機器市場の成長ドライバーは明確だ。特に日本発の医療機器イノベーションは、国内市場だけでなくグローバル展開の可能性も秘めている。
RMDパートナーズ東京の挑戦は、日本の医療機器産業の競争力強化と、革新的な医療技術の社会実装を加速させる重要な一歩となるだろう。医療機器分野への投資を検討する投資家にとって、注目すべきプレーヤーの登場と言える。
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