琉球銀行、20億円規模の「BORベンチャーファンド3号」組成 地銀系VCとして全国展開を本格化

株式会社琉球銀行が、総額20億円の「BORベンチャーファンド3号」を組成。前ファンドから規模を大幅拡充し、県内外のシードからレイターまで全ステージへの投資を実施。地域金融機関の枠を超えたスタートアップ・エコシステムの構築を目指す。

地銀系ファンドの新たな挑戦:地域から全国へ

株式会社琉球銀行(頭取:島袋健)は、株式会社琉球キャピタル(代表取締役:松原知之)を無限責任組合員とする「BORベンチャーファンド3号投資事業有限責任組合」の組成を発表した。総額20億円という規模は、地方銀行系VCファンドとしては大型の部類に入り、同行のスタートアップ支援への本気度を示している。

注目すべきは、投資対象を「県内外」と明確に定義し、地域の枠を超えた全国規模での投資活動を展開する点だ。これは、従来の地銀系ファンドが地域限定型であることが多い中、新たなモデルを提示するものと言える。

11件の投資実績を基盤に規模を大幅拡充

先行する「BORベンチャーファンド2号」では、革新的なビジネスモデルや新技術により、持続可能な発展につながる新事業・新産業の創出に取り組む企業11社への投資を実行してきた。この実績を踏まえ、3号ファンドでは規模を大幅に拡充している。

2号ファンドの規模は非公開だが、「大幅に拡充」という表現から、少なくとも2倍以上の規模拡大が推測される。これは、2号ファンドでの投資活動を通じて蓄積したノウハウと実績が、新ファンドの大型化を可能にしたと考えられる。

全ステージ対応で柔軟な支援体制を構築

3号ファンドの特徴は、創業初期(シード)から成長後期(レイター)まで全ステージを投資対象とする点にある。これにより、スタートアップの成長段階に応じた継続的な支援が可能となる。

投資形態も株式、種類株、新株予約権付社債など多様な手法を用意しており、スタートアップのニーズに応じた柔軟な資金提供が可能だ。存続期間を10年と長期に設定していることも、じっくりと企業価値向上に取り組む姿勢の表れと言える。

沖縄から発信する新たな地銀VCモデル

琉球銀行は「地域金融機関の枠を超えたスタートアップ・エコシステムの中核的存在を目指す」と宣言している。これは、単なる資金提供者としてではなく、スタートアップ・エコシステムのハブとしての役割を担うという強い意志表明だ。

沖縄という地理的特性を考えると、アジアへのゲートウェイとしての機能も期待される。観光、物流、IT、バイオなど、沖縄の地域特性を活かした産業分野での投資機会も豊富だ。

地方創生とイノベーションの両立を目指す

同日発表された「BORベンチャーデット」の取扱開始や、7月に締結された沖縄科学技術大学院大学(OIST)との産学連携協定など、琉球銀行はスタートアップ支援体制を多面的に強化している。

OISTは世界トップレベルの研究機関として知られ、ディープテック分野でのスタートアップ創出が期待されている。琉球銀行との連携により、研究シーズの事業化が加速する可能性がある。

投資家にとっての注目ポイント

20億円規模のファンドは、年間20〜30社程度への投資が可能な規模感だ。全国展開により投資機会が拡大する一方、沖縄という地域性を活かした独自の案件発掘も期待できる。

また、地銀系ファンドとしての安定性と、全ステージ対応による柔軟性を併せ持つ点も特徴的だ。共同投資のパートナーとしても、地域を超えた連携が期待できるだろう。

琉球銀行の取り組みは、地方銀行がスタートアップ・エコシステムの中核的プレーヤーとなる新たなモデルを示している。地方創生とイノベーション創出の両立を目指す同行の挑戦が、日本のスタートアップ・エコシステムにどのような変化をもたらすか、今後の動向が注目される。


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